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考え事をしています。ときどき読書メモ

煮たり焼いたり炒めたりを読んだ話

宮脇孝雄「煮たり焼いたり炒めたり」(早川書房)を読みました。

煮たり焼いたり炒めたり―真夜中のキッチンで (ハヤカワ文庫JA)

煮たり焼いたり炒めたり―真夜中のキッチンで (ハヤカワ文庫JA)

 

雑誌連載されていたコラムをまとめた「書斎の料理人」という単行本の増補改訂版で、文庫化に際して改題したものだそうです。

初版発行日を見ると1998年(私が購入したのは二刷目)、単行本の方は1991年初版発行となっているので、結構情報が古くなっているところもあるのですが、エッセイやコラムに多い時事問題などは取り上げていないのでそこまで気にならないと思います。

 

内容としては、翻訳家・評論家の作者が、日常の出来事や洋書にまつわるエピソードに絡めて、様々なレシピを紹介しているコラムです。

面白いのは洋書から翻訳・アレンジしたレシピを紹介しているところですね。

料理研究家でもある作者が、スーパーの食材に文句をつけたり、おおざっぱなレシピにツッコミを入れたり、電子レンジを褒めたりしながら、淡々と作り方と味についての感想を述べていく様子は、レシピ本というよりは日記に近くて楽しかったです。

改題前初版のあたりだと、(結婚している)男性が家庭で料理を作るのは、今より珍しいことだったようですが、実際のところどうだったのでしょう。

私の父は若い頃調理の専門学校に通っており、休日によくご飯を作ってくれていたので、家で料理をする男の人というのはそんなに違和感がないです。男女限らず料理が出来る人は素敵だと思います。

まあ、私は料理しないんですけど…。

 

他人の日記を読むの、ブログもツイッターも、楽しくて仕方ないんですよ。文字に出てくる人格と実際の会話に出てくる人格って違うので…。

コラムとかエッセイとか、大好きなのですが、コラムやエッセイは読者がいることを前提としているからか、なんとなく文章の中に「気取り」が入っていて、その気取り方が人によって違うのがまた面白いのです。

こちらも、よく海外書籍(翻訳されたもの)を読まれる方ならわかると思うのですが、レポートのような落ち着いた地の文、色々なところから引用される知識や慣用句、意外と乱暴な言い回し等々、「あれ?日本人の作者の本だったかな?」となってしまうような気取り方の本となっています。

海外ハードボイルド小説とか読むと村上春樹がいかに洋書が好きかわかるよね、というのを色々なところで聞くんですが昭和軽薄体 - Wikipediaみたいに英語小説翻訳体ってあるんでしょうか。

あるとしたらこの本は確実に該当しますね…。そもそも翻訳家の書いた本でした。

 

一つのセクションにつき一つの料理について取り上げているのですが、写真や挿絵は一切ないので、レシピ本としてはちょっと味気ないです。あくまで、作者の料理や生活の様子を、日記を覗き見するような感じで楽しむコラム集として読む本となっています。

文体がくどくないのでさらっと読めるし、一つ一つが短いので、ちょっとしたすきま時間にもおすすめです。レシピ本としては、掲載されているレシピでまだ作っていないのでなんともいえないのですが、一部分量や調理工程が簡単にしか載っていないものがあるので、どちらかといえば初心者以上向けだと思います。

帰り道の電車とかで読んだら、買い物して帰りたくなるかもしれない。

 

おわり